大人の言い訳は、相手への誠意でありやさしさであり愛です。何かとややこしくてままならない大人の日々ですが、適切な言い訳を繰り出して、自分を守りつつ周囲のストレスをできるだけ少なくしてしまいましょう。


講師
石原 壮一郎さん
1963年三重県生まれ。大人の美しさと可能性を追求するコラムニスト。1993年に『大人養成講座』でデビュー以来、日本の大人シーンを牽引している。『家族史ノート- 平成と昭和の記録が明日の希望になる
』も好評!
うっかり名刺を切らしていた
マヌケなドラマのインパクトで本当のマヌケさをかき消す
取引先にせよ同業者にせよ、初対面の人との名刺交換は、社会人にとって極めて神聖な儀式です。たとえ、今まさに地球に巨大隕石が迫っているとしても、相手が名刺を差し出したら、こちらも差し出しつつ、うやうやしく押し頂かなければなりません。
かくも重要な名刺交換ですが、にもかかわらず、時々うっかり名刺を切らしてしまうのが、人間の愚かさでありマヌケさ。言い訳という形でせいいっぱいの誠意を尽くさないと、社会人失格のレッテルを貼られてしまいます。
名刺入れに名刺がないことに気づいたときに、まず必要なのは青ざめている気配を表現すること。小さく「うわっ」と呟いて、1秒ほどフリーズします。そっと顔を上げつつ「たいへん申し訳ありません。あいにく名刺を切らしてしまい……」と、絞り出すような口調で謝りましょう。
その場で名刺をわたせなくても、たいして迷惑がかかるわけではありません。しかし、軽い調子で謝るのは、相手に対する侮辱。大げさにうろたえることも、大切な言い訳と心得たいものです。
名刺入れをのぞく前から切れていることがわかっている場合は、名刺がない理由を説明するマヌケなドラマをひねり出しましょう。
「昨日、デスクでコーヒーを盛大に倒して、名刺がすべてコーヒー色に染まってしまい……」 「出来上がったばかりの名刺を箱ごとカバンに入れたつもりが、なぜかキャラメルの箱で……」
相手は「ホントかよ?」と思いつつ、マヌケな言い訳をしてきたケナゲさに免じて、苦笑いしつつ許してくれます……きっと。
じつは大切なのは、このあと。うまく言い訳できたとホッとしている場合ではありません。 「社に戻ったら、すぐこちらに名刺をお送りいたします!」 と宣言し、言葉通りにすぐ発送します。そう言いつつ本当に送ってくる人はめったにいないので、相手は「なんてちゃんとした人だろう」と思ってくれるはず。
口先だけでなく、時には行動による言い訳という合わせ技も繰り出して、失敗を踏み台に自分の株を上げてしまいましょう。
言い訳の極意
言葉と行動の合わせ技で、 より強力なパワーをまとわせる ことができる——。 言い訳は生きる上での 真理を教えてくれる。
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