スーツスタイルを仕事に、人生にどう活かすかは、一人一人の働き方や自己プロデュースのあり方によって大きく違う。スーツスタイルに”普遍”はあれど、スーツの選び方に絶対の正解はないのだ。着る人を魅力的な人物に見せる服=スーツを、アナタの”これから”にどう、上手に役立てるか?ここではその術を様々な目線から、明らかにしていこう。
スタイルが自由になってきた今だからこそ、逆にクラシックが再評価されています(中村さん)

スーツ本来のエレガンスが今、見直されている
金森 では、まず中村さんに伺いたいと思います。スーツのスタンダードが変わりつつあるというお話ですが、具体的にはどうなっているのでしょう?
中村 簡単に言うと、タイトフィット全盛時代が一巡し、クラシックなスーツ本来のフィッティングや意匠が再評価されているということです。ここ十数年で洋服の細身化が進み、スリムフィットが圧倒的な主流になっていきました。ですがそれも行きつくところまで行った今、適度なゆとりがあり、男を逞しく見せる服という、スーツ本来の姿に回帰しようという流れが本格化しているのだと思います。
山浦 プリーツ入りのパンツが復権しているのもその一環ですね。当店のお客様も、クラシックなサイズ感にこだわる方が増えてきています。
森岡 信頼感を演出するスーツという側面から見ても、クラシック回帰は歓迎すべき流れですね。細すぎるスーツはファッション好きには見えても、仕事ができそうには見えないですから。
中村 私の感覚からすると、今までのスリムなスーツはカジュアル感が強かったですが、今はスーツがエレガントなバランスに戻ってきている感がありますね。面白いのは、このクラシック路線を20~30代の若い人たちがリードしているという点。特に海外においてそれが顕著です。私のブログも、最近若い読者の方が増えているんですよ。
山浦 うちでも若い方、多いですね。
森岡 慣れたら、そこから簡単に離れられないという大人の気持ちもわかります。
中村 何も全てをガラリと変えなさいというわけではないんです。新しくスーツを買うとき、今までよりちょっとゆとりのあるものにしてみるとか、少しラペルの広いものを選ぶとか、それで十分。何ならスーツは今までのままで、シャツタイを変えるだけでもかなり印象をアップデートできますよ。
金森 ちなみに中村さんご自身は、シャツとタイなら今年、どちらを多く買い足されましたか?
中村 シャツですね。タイはもう沢山持っているからという理由もありますが。最近は、ラウンドカラーやタブカラーのシャツを多く買い足しています。
森岡 ステップ・バイ・ステップの変化でいいということですね。
中村さんが分析する”今のスーツの動向”
1. ビジネス、遊び着ともに、フィット感がタイトからゆとりあるクラシックに回帰
2. 今はむしろ若い人たちがクラシックを”カッコイイ”と支持している
3. ただし、そのクラシックは懐古ではなく時代に合った”収古”新しいクラシックである。
クラシック回帰の上手な取り入れ方は……
まずはコーディネートで小さな変化を楽しんでみよう

「Vゾーンにクラシックテイストを盛り込むだけでも、今の気分を表現できます」と中村さん。シャツならタブカラーやラウンドカラーといった襟型がオススメ。トラッドなレジメンタルタイも旬だ。