ジュネーブ取材 DAY 3
オクトの多彩なバリエーション
ブルガリは今年、レマン湖畔の歴史あるホテルの一つ、ホテル・ドゥ・ラ・ペにおいて、独自のショーを開催した。
取材三日目の早朝にそこを訪れると、新しいオクトのクロノグラフや、印象的なブルーの文字盤のオクト ローマなど、様々なニューモデルが我々を待ち受けてくれていた。
オクトと言えば昨年11月に開催された、ジュネーブ時計グランプリで、極薄チタンケースの「フィニッシモ オートマティック」が、メンズ・ウォッチ部門賞に選ばれ、またトゥールビヨン部門でも、極薄ムーブメントの「オクト フィニッシモ トゥールビヨン スケルトン」が賞に輝き、一挙にダブル受賞の栄誉を得た。
僕がジュネーブ時計グランプリの審査員を務めた2016年にも、フィニッシモのオートマティックがノミネートされていて、それを見た同じく審査員の時計師、フィリップ・デュフォー氏が「この時計は格別なものだね」と、僕に言ったのを思い出す。このインパクトのある多面体に仕上げられたケースや、自動巻き機構をあくまで薄型に仕上げたムーブメントへの、それは賛辞だったように思う。
チタニウムのケースの軽さも、このシリーズの、装着感の良さを後押ししているし、スーツやジャケットを着たときにも、シャツの袖にうまく収まるところが、ドレスウォッチとしての理想を実現しているではないか。
新しいクロノグラフもチタニウムのケースを採用し、そのムーブメントはLVMHグループの名機、エル・プリメロという理想的な組み合わせだ。フィニッシモほどの極薄ケースではないが、クロノグラフとしては薄く軽快なイメージがあり、スポーティさとドレッシーさを兼ね備えたそのデザインは、きっと人気を博すに違いない。

デザイナーのファブリッツィオ・ボナマッサ氏が、目を輝かせて見せてくれたのが、レディスウォッチのミニッツリピーターだったが、その文字盤が、日本に来て影響を受けたという漆の技法にインスパイアされた漆黒の文字盤の上に金粉を蒔いたようなシックなデザインだった。また大粒のダイヤやエメラルドなどを、ふんだんに使ったセルペンティの、ジュエリー版など、充実したコレクションを堪能したのだ。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛