SIHH取材 DAY 4
モンブランらしい伝説と冒険の時計
スモーク グリーンの文字盤が印象的な「モンブラン 1858 モノプッシャー クロノグラフ リミテッドエディション 100」は、伝説のミネルバのムーブメント「13.20」をもとに復刻された「13.21」を搭載する、コレクターが待ち望んでいた時計だ。
そうこれはミネルバ社の創立160周年を祝い、オマージュとしてささげられた時計なのだ。
腕時計のための小型クロノグラフ・キャリバーとして、1920年に開発された、この「13.20」を、現代のモンブランは、宝物のように扱っていて、その魅力を最大現に引き出すため、部品の全てを磨き上げ、メカニズムを鑑賞することを楽しむ時計としてきた。
ヴィンテージ感あふれるドーム型サファイアグラスの風防や、2時位置の角型クロノ・プッシャーなどはクラッシックな佇まいだが、用いられている素材や、100m防水など、そのスペックは21世紀の時計そのものである。
同じミネルバのムーブメントを用いた、登山のためのポケットウォッチも作られた。1920年代から30年代には、こうした登山用のポケットウォッチが作られていたと言い、その復刻版がこれである。
24時間表示の時計機能のほか、ストップウォッチとしても使え、心拍数を計るためのパルセーション・スケールがベゼルに刻まれていたり、時計の裏蓋に方位磁石が組み込まれていたりと、登山のための計器としての機能が備えられている。文字盤に使われているのはアルプスで採取された石で、淡いブルーと白い模様が見上げる空のような美しさだ。
「モンブラン 1858 ジオスフェール リミテッドエディション 1858」は、七大陸最高峰を制覇した、偉大な登山家たちに捧げられた時計だという。
ブロンズ製ケースの、ワールドタイマー機能を持つこの時計は、文字盤に北半球と南半球の、二つのドーム形地図を持ち、それが24時間かけて回転して計時し、また色分けされた24時間スケールにより、昼夜の別を表示するというものだ。そして9時位置のサブダイアルで、第二時間帯の時刻を表示する機能も持ち合わせている。
ちょっと昔風のレザーベルトのこの時計を着けると、冒険家になった気分になるに違いない。

Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛