SIHH取材 DAY 3

150周年を祝うコレクション
IWCは今年、創立150周年を迎えた。
アメリカ人時計師F.A.ジョーンズがスイスに渡り、シャフハウゼンの町を流れる、ライン川の滝の急流を利用し、それを動力にした時計工場を開いたのが1868年のことだった。
その150周年を祝うために、さまざまなニューモデルが作られたのだが、そのうちの一つが「IWCトリビュート・トゥ・パルウェーバー”150イヤーズ”」という、機械式にしてデジタル表示の時計だ。
時刻をデジタル的に表示しようという試みは、懐中時計の時代にすでに始まっていた。それを考案したのがパルウェーバーという時計師で、IWCもそのアイデアの時計を、懐中時計として1884年に作っていたのだそうだ。
何層にも塗り重ねられたラッカー文字盤は、昔の時計のエナメル文字盤の雰囲気をよく再現している。
12時位置に時間、真ん中に分、そしてスモールセコンドによる秒表示が6時位置に。上から順に時、分、秒と、時間を読み取れるという仕掛けは、レギュレーターウォッチ的で明快なものである。
また、「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー・トゥールビヨン”150イヤーズ”」は、同社のレジェンド時計師である、クルト・クラウス氏が”ダ・ヴィンチ”のために開発した、永久カレンダーシステムに、トゥールビヨンを加えた複雑時計の頂点と言えるモデルだ。
IWCらしい明快なフォントのアラビア数字によるインデックスや、月、日付、曜日、西暦の年号、永久ムーンフェイズなどが見事に整然と、ラッカー仕上げの文字盤にレイアウトされている。
このスッキリくっきりしたデザインこそ、IWCの持ち味と言えるだろう。
「ダ・ヴィンチ・オートマティック”150イヤーズ”」というモデルは、可動式のラグを持ち、スモールセコンドによるクラシックな顔が持ち味の、いつも行動を共にしたくなる時計だ。印象的なブルー文字盤が魅力的なこのモデル、外見は古典的だが負荷がかかる部品に、セラミックが使われるなど、中身のムーブメントは最新の物なのだ。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。

撮影/岸田克法 文/松山 猛