SIHH取材 DAY 3

ロイヤル オーク、その魅力を再確認
オーデマ ピゲのロイヤル オークは、ラグジュアリー・スポーツ・ウォッチという、新しいジャンルを切り開く腕時計として、1972年に登場した。以来46年のもの間、その基本デザインを変えることなく、メゾンを支え続けてきたのだ。
この時計が作られた1972年とは、クォーツ・ショックと言われた、スイス時計の大転換期だった。不世出の時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタが、たった一晩で考えたという、八角形のベゼルを独特の形状のビスで固定したデザインは、スポーティでありながらエレガントで、時計ファンの心をしっかりとつかんだ。そして、メゾンの中心的コレクションとなり、時代ごとにさまざまなバリエーションを生みながら、進化し続けてきたロングセラーだ。
昨年発表されたフロステッドゴールドという、イタリアに残された昔ながらの鍛金技術によるケースフィニッシュが施された、ホワイトゴールド、37mmケースの「ロイヤル オーク・ダブル バランスホイール・オープンワーク」は魅力的だった。41mmでは少し大きいという印象を持っていた人々にも、このサイズ感なら身に着けてみたいと思わせるだろう。
オーデマ ピゲ社が開発した、二重のテンプを持つ高精度ムーブメントをスケルトナイズしたもので、メゾンの技量の高さを証明する仕事ぶりだと言えよう。
オフショアのシリーズにもさまざまなバリエーションが作られ、新しいロイヤル オークのスポーティな魅力を作り上げていた。
また新設計の薄型永久カレンダーシステムのムーブメントを搭載した「ロイヤル オーク RD#2」というプロトタイプを見せてもらったが、そのムーブメントの厚さは、わずか2.89mmというもので、これは今、世界で最も薄く作られた永久カレンダームーブメントという事らしい。文字盤の裏側のプレートにくぼみを持たせ、そこにカムやピンなどを配置し、厚さを抑える工夫が見られる、ムーブメントの完成度は高い。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛