良い関係を築くには、まず一緒の食事から。達人たちのリアルな会食術を掘り下げる。

「銀座 三亀」の三代目店主、南條勲夫さんが店に立つようになって60年。すでに傘寿を迎えているが、いまだに昼も夜も店に立ち、その気取らない人柄ときめ細やかな心配りで訪れる人を魅了する。「南條さんはとにかくよく動かれる。カウンター席のみならず、テーブル席も、小上がりも、等しくイイ空気に包まれているのがこの店の特徴。私がお連れした方々は、いつも満足してお帰りになられますね」(内山さん)。
今月の”会”の達人

ハイアット セントリック銀座 東京 総支配人内山 渡教さん
国内外のハイアットグループホテルにて、ホテル運営を多方面から経験。「アンダーズ 東京」の日本初上陸を成功に導いた手腕が評価されて現職に。伝統と革新の街・銀座のエッセンスを表現するホテルづくりを目指す。
「店は人なり」を地で行く銀座の真っ当な料理店
ビジネス会食の目的は単に美味しいものを食べることではない。オフィスを離れて信頼関係を構築し、それをもとに仕事を円滑に進めることだ。東京を代表する街・銀座には、その後押しをしてくれる一流店が集中しているが、長年ホテルマンとして最高のホスピタリティを追求してきた「ハイアット セントリック 銀座 東京」の総支配人・内山渡教さんは、とりわけ昭和22年創業の老舗「銀座 三亀」を頼りにしているという。
「素材の良さと季節表現にこだわり抜いたお料理が素晴らしいのはもちろんのこと、何より御店主の南條勲夫さんのお人柄が素晴らしい。人情味に溢れていて、お話も機知に富んでいる。耳に心地いい落語を聴いている感覚と似ています。そうかといって出しゃばるようなことは決してなさいません。ご本人は『話し過ぎるのは駄目。話しかけないのも駄目』とよくおっしゃいますが、まさに付かず離れずの接客を心得ていらっしゃるので、私もお客様を安心してお連れすることができるのです」
南條さんのもとには舌の肥えた文化人たちも足繁く通う。作家・故 渡辺淳一氏もその一人で、氏のベストセラー小説『失楽園』の舞台になったのは有名な話だ。”いい店にはいい客が集まる”という定説があるが、「銀座 三亀」はまさにそれを象徴する店だろう。
“会”を成功に導くには「付かず離れずの接客を極める店を選ぶ」