近頃、エグゼクティブの間でますます話題のアート。知識を広げ、ビジネス会話を広げるためには、アートの「用語」にも精通しておきたい。

《Hub-1, Entrance,296-8, Sungbook-Dong,Sungboo-Ku, Seoul, Korea》243.8 x 191 x 236.8 (h) cm (Dark Green)
《Hub-1,Entrance,260-7, Sungbook-Dong, Sungboo-Ku, Seoul, Korea》247.3 x 381.6 x 336.9 (h) cm (Dark Yellow)
《Hub-2, Breakfast Corner,260-7, Sungbook-Dong, Sungboo-Ku, Seoul, Korea》357 x 326.3 x 270.8 (h) cm (Pink)
Photo by Taegsu Jeon Courtesy the Artist, Lehmann Maupin, New York, Hong Kong and Seoul and Victoria Miro, London/Venice
“インスタレーション”

アーティストはこの人!
スゥ・ドーホー(Suh Do Ho)
韓国に生まれたスゥ・ドーホーは、海外の欧米主導のアート界で作家活動をしながら、”いったい「個人」とはなにか””文化の「境界線」はどこにあるのか”を模索していった。ニューヨークやベルリンで実際に暮らした家を薄い布を使い再構築したシリーズは、空間を異次元に変貌させるほどのインパクトがあり、世界中の著名な美術館にコレクションされている。
インスタレーションとは時間と空間の共有体験だ
十和田市現代美術館にコミッション・ワークのあるスゥ・ドーホーは、ロンドン、N.Y.、ソウルを拠点に活動している世界的アーティスト。家、空間、移動、記憶などがテーマの多くの作品は、「インスタレーション」と呼ばれる空間全体を使った手法によるもの。
「インスタレーション」というアートワードは、もともとは「ある場所にものを設置する」という単語「インストール」に由来する。コンピュータにソフトをインストールするというように、美術館の空間に、アーティストの手によってインストールされた作品が「インスタレーション」だ。展示空間そのものがアーティストの作品となるため、床・壁・天井から作り込む大掛かりな工事が必要になるが、その時その場所でしか鑑賞できない、より豊かなアート作品を楽しむことができる。
本展で披露されるのは、光を通す薄い布で、建築物のディテールを再現するシリーズの最新作。彼が暮らした家の扉、階段などが美しい半透明の布に象られ、時間と空間の記憶が繊細な手触りを持つ作品となって現れる。「インスタレーションとは、絵画のなかに観客が完全に入ってしまったような感覚になる作品」とキュレーター 金澤 韻(かなざわ こだま)氏。会場を埋め尽くす贅沢なアートとの一体感を、十和田の自然と共に味わってみてほしい。
社会と個人、異文化。人間同士の間に存在する、目に見えない境界線を越えていく

異なる文化を持つ都市を旅しているスゥが、ロンドンの街を歩きながら、低位置から撮影した映像作品。人の往来や流れゆく街角の風景に、彼は何を観たのだろうか。今回の展覧会タイトル、「パサージュ」を連想させる。
インスタレーションは、作品世界に彷徨い込めるアート。その世界観をダイレクトに感じとれる

高さ9メートルの空間に設置された巨大なインスタレーションは、数万体の小さな樹脂製の人型が肩車をするように天井から床までつながっている。赤、橙、透明のグラデーションが美しく、壮観。生と死、輪廻転生を表現する作品。
「スゥ・ドーホー:Passage/s パサージュ 」
会期: 6月2日(土)〜 10月14日(日)
会場:十和田市現代美術館(青森県十和田市西二番町10-9)
開館時間:9時〜 17時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日)
ただし8月6日(月)、13日(月)は開館
料金:一般800円ほか
お問い合わせ:十和田市現代美術館 Tel.0176-20-1127
[MEN’S EX2018年7月号の記事を再構成]
文/柘植 響 構成/神山典子