「ノクターナル・アニマルズ」

監督デビュー作『シングルマン』で高い評価を受けたトム・フォードの、7年ぶりとなる監督第2作が公開される。
スーザンは、ロサンゼルスでアート・ギャラリーのオーナーとして成功しているが、夫との関係には満たされていない。彼女のもとに、20年前に離婚したエドワードから、彼が書いた小説『夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)』が送られてくる。テキサスで繰り広げられる暴力と死の臭いが充満するクライム小説に、スーザンはのめり込む。そしてエドワードと過ごしたニューヨークでの日々を回想し、彼に連絡を入れる。
フォードは現在と過去、小説という3つのパートを巧みに交差させ、最後まで観客の好奇心を刺激し、緊張の糸を極限まで張り詰めさせる。
彼はそのビジュアルセンスばかりが評価されがちだが、本作でも明らかなように、脚本=ストーリーテラーとしての力が凄まじい。もはや「ファッション・デザイナーの」という肩書は不要だということを、本作が証明している。

『ノクターナル・アニマルズ』
監督:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン ほか
TOHOシネマズシャンテほか全国にて公開中
[MEN’S EX2017年12月号の記事を再構成]
文/須永貴子、神山典子 構成・文/甘利美緒