今年も一月のジュネーブに出かけることができた。身構えていたほどの寒さではなく、取材は順調に進んだのは幸いだった。真っ先に訪問したのは、ジュネーブ郊外のジャントーにあるウォッチランド。長らく工事を進めていた新しい工場の建物も完成し、これからはさらに製造工程がスムースになるということだった。残念ながら時間が足りなくて、新工場の見学はかなわなかったが、ここで働く人々にとっても、スペースが拡張したので、さぞかし仕事の効率も上がるに違いない。
フランク ミュラーの新作は、やはりその中心となったのは現代的なフォルムの「ヴァンガード」だが、クラシックなトノウカーベックス ケースのアーカイブモデル「トノウ カーベックス グランギシェ」にも目を引くものがあった。

また面白いのは、オリジナルの発売から25周年を迎えた「カサブランカ」が、新しい装いで登場したことだろう。
1994年に発表されたこの時計は、それまでは高価なゴールドのケースだけだったコレクションに、ステンレスケースを加えて、若い時計ファンにも手の届く価格帯の時計を作ろうと、自身も若かったフランク ミュラーが考えた結果として生まれた。ヨーロッパ人のあこがれのリゾート地であり、ハンフリー・ボガードの映画で有名になった北アフリカの、モロッコの海辺の街カサブランカからネーミングされたこの時計は、旅を思い起こさせるトランク型のボックスに入れて発売されたものだった。
今年のモデル「カサブランカ 25th」は、ホワイトとブルーの二種類の文字盤に、黄色い夜光塗料のインデックスが印象的で、一枚革にステッチをあしらったベルトが素敵だ。