
カラフルなパッチワークのニットウェアを着て彼が登場したとき、ちょうど夕陽がさんさんと降り注いで、とても美しかったのを覚えている。
今年で創業65年を迎えるイタリアの老舗・ミッソーニの3代目、ジャコモ・ミッソーニ氏だ。
2年前に来日したときも、ミッソーニというブランドの色使いについて熱く語ってくれたが、今回の来日でも、2018春夏コレクションを見ながら、そのこだわりを惜しみなく聞かせてくれた。

平澤:さて、今日着ているパッチワークのニット。めちゃめちゃ手が込んでいますね。 これは作るのがとても難しいのでは?
ジャコモ:こうしたパッチワークの技術を、ミッソーニでは「Pezzi Arte(ペッツィ・アルテ)」と呼んでいるんです。つまりアートピース、というわけですね。初代創業者である私の祖父は、ブランドを創業した若かりし頃、美しい生地を無駄にしたくないという思いから、洋服を作るために裁断した後のいろいろな端切れを組み合わせて、一枚の布にしていました。そしてそれをタペストリーのようにして、壁に飾ったりしていたんです。そうして作った一枚の布が、服にも進化したというわけです。ミッソーニの洋服は、「着られるアート」とも称されますが、このアートピースは、生地を大切にする、そんな心がけから始まりました。
平澤:それは面白いストーリー! 1枚1枚の端切れをつなぎ合わせたということは、昔は、同じ柄のモノがひとつとしてなかったんですか?
ジャコモ:そうです。当時は、1つ1つすべて柄も組み合わせも違うものになりました。
平澤:今は、たとえば今日着ているセーターは、どのように作るんですか?
ジャコモ:最近は、コレクションに使う生地をカットして、コンピューターで配置も決めて、リブをつけてパッチワーク状の布にしていきます。そうして布状にしてから、生地を切り出して縫い、袖や裾や襟をつけていきます。これらの工程を、すべて職人たちが手作業でやっていくので、1着作るのに、とても時間がかかるんです。
平澤:なるほど、まさに「着るアート」というわけですね