「リーダーたちの本とメガネ」TANK 今井雄一氏

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リーダーたちの本とメガネ

リーダーとしてビジネスを牽引する男たちが愛読する本&愛用するメガネ。そこには、日々、厳しい競争の中で奮闘する彼らの思考法やビジネス哲学が宿っている。

今井 雄一氏

Profile

TANK
代表取締役
PRプロデューサー
今井雄一氏

1974年生まれ。茨城県出身。大学卒業後、メディアリレーションを中心とした総合PR会社「フルハウス」にてPRの基礎を学ぶ。2003年に「サニーサイドアップ」に転職し、主にヘアケアブランドや政府観光局などのPRを担当。’12年に「最も影響力のあるPR会社」を目指して「TANK」を設立。ホテル、飲食、ファッション、音楽、アートなど多岐にわたるジャンルの企業のPR業務を請け負う。


PRプロデューサーがメガネに求めるものとは?

今回、注目する”リーダー”は、2012年にPR会社「TANK」を立ち上げた代表取締役の今井雄一氏。

新卒からPR畑を歩み続け、そこで培った幅広いネットワークを武器に、大型イベントやハイブランド、商業施設、政府観光局、酒類、最近ではラグジュアリー客船など、幅広いジャンルのPR実績を持つ腕利きである。

そんな氏がメガネを掛け始めたのは今から約10年前、30代後半に差し掛かった頃のこと。もともとメガネに興味はあったが、自己表現の新たな手段、さらに目に力を持たせる目的で愛用し始めたという。

「年齢のせいで、疲れが目に出るようになってきたんです。パブリックリレーションズの仕事は、クライアントである企業や団体が社会との良好な関係づくりを行うための施策を提案することを前提としているので、プレゼンをこなさないことには何も始まらないわけですが、そこでこちらが疲労感を滲ませていたら、悪い印象を抱かれかねないでしょう? それで、メガネで誤魔化そうとしたんですよね。ちゃんと隠しきれていたかどうかわかりませんが(笑)」

今井氏が選んだメガネは縁の太いタイプだった。もともとファッション性の強いアイテムを好む性質ゆえ、そのチョイスに特別な意図はなかったそうだが、結果的にこの出合いが今井氏に新たな発見をもたらすことになった。

「メガネって掛けるだけでキャラクターを引き立てるので、大勢が集うPRイベントでしかお会いすることのない記者さんやカメラマンさんにも顔を覚えてもらえるようになったんです。特に今の会社を立ち上げてからは『メガネの社長がやっているところでしょ』みたいに認識していただくことも多くなりました。メガネの魅力は機能性に限らないと実感しています」

物を伝えるときには、その物の良さだけを訴えても説得力はない。背景や周辺状況を調べ上げて多彩な知識を蓄える人が伝えるほうが説得力を持つ。そして、それをポジティブに伝える雰囲気を備えている人がいいPRマンになり得ると、今井氏は語る。

現在、彼がヘビロテしているのは太セルの代名詞とも言えるトム フォードのメガネだが、それを掛けた姿はパンチが効いていて、なんとはなしに面白いことを仕掛けてくれるに違いないと期待してしまうのであった。

今こそ本の世界に浸る時間を持つことが必要かもしれない

さて、次は今井氏の愛読書について掘り下げよう。そう思ってご本人に水を向けてみると、「本を手に取る暇がないのが正直なところで」と照れ臭そうに返された。

「メールはもちろん、ツイッターにLINEにフェイスブックにインスタグラム……。今の時代は見るものがありすぎてなかなか本に辿り着けません。特にまとまった時間を必要とする小説とは、若い頃に比べてすっかり縁遠くなってしまいました」

そう話す今井氏の”心に残る一冊”は1996年に発売された小説『聖なる予言』。今のように「スピリチュアル」という言葉が浸透するずっと前に、「シンクロニシティ(偶然の一致)」という概念と気づきを一般の人々に深く浸透させた本である。

「僕はもともとロマンチストで思い込みが強く、現実を踏まえながら、理想の未来を勝手に想像してワクワクするような人間なんですが、これに出合ったことで、世の中の出来事は理屈ですべて説明しきれない、目に見えないものが作用することもあり得ると強く思うようになりました。そして、その考え方は、パフォーマンス向上や目標達成を目指す”巻き込み力”を求められるPRの仕事に、少なからず役立っている気がします」

今井氏からはこの『聖なる予言』のほかにも数冊がリコメンドされたが、その中にビジネス本は含まれていなかった。その理由を訊ねて得られた答えが実に興味深い。

「ビジネス本は実用的ですが、小説を読んだときのような心の豊かさはなかなか得られません。先ほども触れましたが、SNSが盛んになって、今、僕らは膨大な量の情報にさらされる日々を送っています。それによって知らなくてもいいことを知ってしまうというストレスも増えました。なので、時にそこから離れてアナログ的な時間を過ごし、リフレッシュすることが必要でしょう。例えば旅に出たら、プールサイドで小説を読む。フィクションの世界にどっぷり浸かることで、かえって現実と誠実に向き合えるようにもなりますし」

それを聞いてふと思った。昨今、「マインドフルネス」が注目を集め、研修に導入する企業も増えているが、小説を読むことそのものがマインドフルネスに満ちた体験であり、「今、ここ」に意識を集中させられるのかもしれない。

2024

VOL.341

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